「女性自身」12/2発売号 PRより

歯には力を加えられるとその方向に移動する性質があり、それを利用して、口の中に矯正装置を入れ、歯に一定の力を持続的にかけて人工的に動かし、悪い歯並びや噛み合わせを治すことが矯正歯科です。見た目に良い歯並びでも噛み合わせが悪いと、顎関節症や肩凝り、腰痛などの原因になることもあり、現在では、年齢を問わず単に見かけをきれいに並べるだけではなく、噛み合わせと姿勢や全身状態との関係も重視されるようになっています。
矯正治療には歯にブラケットという装置を取り付け、そこにワイヤーを通して歯を動かしていくワイヤー矯正、歯の裏側に金属製ブラケットとワイヤーを装着する舌側矯正、インプラントを固定源として歯牙を移動させるインプラント矯正、そしてマウスピース矯正などさまざまな方法があります。
現在、世界中で最も実績がある矯正治療はワイヤー矯正ですが、使用するブラケットの素材は金属、セラミックス、プラスチックが一般的であり、それぞれ良い点と注意すべき点があります。金属製のブラケットは高い強度があり、破損しにくいのですが、審美性を意識される方や金属アレルギーを懸念される方にはお勧めできません。セラミックスやプラスチック製のブラケットは使用するワイヤーの組み合わせにより、目立たなくしたり、口元を明るくしたり、審美的に優れた治療が可能です。しかしながら、従来までのセラミックスブラケットではやや壊れやすいという点、またプラスチックブラケットでは長期の使用に対して細かな傷や着色などの懸念点があります。
高純度のジルコニア素材は高い強度、靭性、耐久性、耐腐食性を有し、スペースシャトルの外壁、光ファイバーの接続部品、人工宝石電子部品、刃物など多くの分野で使用されています。また生体親和性が非常に高いことから近年では人工関節にも使用されています。そして2005年に厚生労働省によるセルコンジルコニアの薬事承認により、差し歯やブリッジなど歯の治療にも応用されてきています。さらに矯正治療にもセルコンジルコニア素材を加工したブラケットが2008年6月に承認を獲得し、臨床的に使用開始されています。

チタン上の細菌増殖

セルコン ジルコニア上の細菌増殖
セルコンジルコニア素材のブラケットではその強度と靭性により長期に安定して治療に使用できること、天然歯に匹敵する審美性を有すること、また表面性状が滑らかで細菌の付着や増殖が少なく、矯正治療の長期性を考慮すると、この素材の出現は患者さんにとっては朗報であり、口の中を衛生的に保てます。
高純度のジルコニア素材の使用は高い安全性や治療効果を期待できる半面、その生成・加工に高度な技術を要するため、他の矯正器具より高額であること、また熟練した技術も必要なため、十分に研修を受けた矯正医で治療を受けられることをお勧めします。
ジルコニア素材で作られたブラケットの利点は、まず歯科医師の立場から見ると、強度が高いこと、汚れにくく清掃性も良いこと、小さいこと、すべりが良いので痛みが少なく、歯を効率よく移動させられることなどが挙げられます。
従来のセラミックスは、治療期間中にまれに割れてしまったり、細かい傷がついたりして取り替えなければならないケースもあるのですが、ジルコニアには金属と同等の強度があるため、その心配がありません。そしてまた、治療が終わって外すときには簡単に外せる操作性の良さもあります。
汚れにくいということは、変色しないことと、表面が常に滑らかで汚れや細菌を吸着しないことの両面からいえるものです。また、滑らかなだけでなく角が丸く加工されており、大きさも従来のブラケットよりかなり小さくなっているため、矯正中は特に念入りな歯の磨き方を指導しますが、歯磨きしやすいことも大きな長所です。
痛みが弱いので、患者さんには力が加わっている感覚があまりなく、実際にはよく移動しています。また、痛みの程度は患者さんによって感じ方がさまざまですが、矯正を開始した直後は、通常1週間程度は痛みがあるものです。それに比べてジルコニアブラケットを使用した場合は、その痛みも3〜5日程度ですむようです。

天然歯と同様の自然な白さで、
小さく目立たないジルコニア ブラケット
成人の患者さんが矯正歯科をする際、最も強く望むのは、審美性に優れていることです。それは患者さんの心理を考えれば当然のことでしょう。ジルコニアブラケットは天然歯のような自然な白さを実現していることに加え、前述した利点は審美的な長所でもあります。第一に、小さくて目立ちません。そして変色しないので常に美しい白さを保つことができます。
小さく作られたジルコニアブラケットは、実は日本独自の技術によるものです。欧米では小さく作るという意識はあまりないようです。大きさのほか、角の丸さや、ワイヤーを通す溝から細部までの滑らかさも、繊細な日本の技術によって、日本人の美意識と感覚に耐え得るものが作られました。美しさに加えて装着感が良くなっています。患者さんはあまり食事に制限なく食べることができるため、精神的なストレスからも解放されます。
矯正中は特別な歯磨きが必要になると述べましたが、プレミアムな素材であるジルコニアを入れているという意識から、患者さん自身のモチベーションが高まり、丁寧に磨くようになることも、派生的な長所でしょう。
矯正歯科の治療期間は、ケースごとにそれぞれ異なりますが、長くみて3年程度と考えていただければよいと思います。もちろん、2年程度やそれより短くてすむケースもあります。
矯正歯科の治療費は、原則として保険の適用外です。治療費もケースによって大きく異なります。ジルコニアを使用する場合、材料そのものの値段が少し高くなります。
ただし、私が患者さんに伺ったかぎりでは、ジルコニアブラケットの長所を考えると、治療費が多少高くなることに抵抗はないようです。さまざまな長所を考慮して、私自身も今後はすべてジルコニアブラケットによる矯正に移行していきたいと考えています。すでに矯正歯科を始めている人も、ブラケットの交換が必要になったタイミングでジルコニアに替えることができます。具体的な治療法や治療期間、治療費などについて詳しくお知りになりたい方は、ぜひ一度、歯科医にご相談されることをお勧めします。


- 大阪歯科大学卒業、大阪大学大学院にて歯学博士号取得。姫路市にてカノミ矯正・小児歯科クリニック開業。日本小児歯科学会専門医指導医、ヨーロッパ矯正歯科学会 専門医、日本矯正歯科学会専門医。


- 東京歯科大学卒業、同大学歯科矯正学講座入局後、2005年に銀座並木通り坂本矯正歯科クリニック開業。日本矯正歯科学会認定医。日本臨床矯正歯科医会、日本アンチエイジング歯科学会認定医、日本顎変形症学会、日本口蓋裂学会等に所属。










